女性の相続・遺言①

これから、相続・遺言について、女性の立場から見ていきたいと思います。まず、第1回目は、アコさん、65歳。夫は67歳、メーカー勤務で大学卒業後入社し、営業一筋で45年。2年前、定年退職したばかり。子どもはなく、夫の両親は他界、夫には兄が一人いる。定年後しばらくして二人は豪華客船の旅にでかけた。乗船したのは、12月。船内では、クリスマスパーティーが開催されタキシード、ロングドレスで参加。夢のような時間を過ごし、客室に戻り休む。朝方、夫が急に苦しみだし、すぐにドクターを呼び手当をしてもらい容体は落ち着いた。この時、夫は思った。もっと早くに遺言書を書いておくべきだったと。まだまだ自分は若いし、遺言書を書くなんて縁起が悪いと先延ばしにしていた。このまま自分が亡くなれば、兄も相続人になり、アコさんに財産を全て残してあげることができない。アコさんも夫に遺言書を書いてほしいとはなかなか言い出せないでいた。そこで、その場に居合わせた船長にお願いをし、証人2人のもと遺言書を作成した。二人は、定年退職後は、世界中をゆっくり旅行したいねと話し合っていた。アコさんが、買い物途中たまたま旅行代理店の前を通りがかったときに豪華客船の旅のパンフレットが目に入り帰って夫に見せた。夫も乗り気で、翌日、旅行代理店に行き申し込みを済まし、1か月後に乗船したのである。                       その後、体調も回復し帰宅したが、この遺言書は普通方式の遺言ができるようになってから6か月生存するときは効力はなくなる。そこで夫は後日、公証役場で公正証書遺言を作成してもらうことにした。付言事項というアコさんへのラブレターを添えて❤

(在船者の遺言)                                  第967条 船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いを持って遺言書を作ることができる。