女性の相続・遺言③

第3回は、初香(ういか)さん47歳。公務員の夫を持つ専業主婦。大学生の長女と社会人1年生の息子と郊外に買った一軒家で家族4人、慎ましやかに暮らしている。初香には、3つ違いの妹がいる。子どもの頃から派手好きで天真爛漫。初香さんとは、対照的な性格であった。開業医と結婚して1女をもうけたが、子どもが中学入学と同時に離婚。現在は、一般企業の正社員として働いているシングルマザーである。彼女たちの母親は、2年前に他界した。父親は、妻を亡くした後、かなり落ち込んで心配したが、週末には、初香と妹が交代で孫をつれてきてくれるので少しずつ日常を取り戻しつつあった。父親は、口には出さないものの、シングルマザーとなった妹のことが不憫でならなかった。生前母親ともよくその話をして二人で心配していた。妹は、実家に来るたびに、娘の塾代とか、修学旅行代とか言っては、父にお金の無心をしてくる。父はやはり娘可愛さで、ついついお金を渡していた。父は、自分が亡くなった後のことが心配になり、妹に4分の3、初香に4分の1を相続させる内容の自筆証書遺言を書き、母の仏壇にしまっておいた。しかしまだその遺言書は、封がされてなかった。たまたま妹が掃除をしているときその遺言書を見つけてしまった。内容を見た妹は、「ウフフ、ラッキー!」とほくそ笑んだ。実はこの頃、妹は会社の上司と不倫関係にあった。ひょんなことから、父はそのことを知ってしまった。父からせびったお金をデート代として使っていたこともだ。そのとき、父は今まで甘やかしすぎたと猛省した。後日、父は公証役場に出向き、姉妹それぞれ相続分2分の1ずつの公正証書遺言を作成した。その中で、初香には、妹のことをよろしく頼むと、妹には姉妹仲良く、これからは子供の為にも真面目に生きていくようにという付言事項を添えることも忘れなかった。

女性の相続・遺言②

第2回は、イズミさん55歳。大手建設会社に勤めるバリバリのキャリアウーマン。結婚歴はなく、現在はローンも完済した2LDKの分譲マンションに住み、独身貴族を楽しんでいる。イズミさんは、50歳の誕生日を迎えてから終活について考え始めた。私が将来、亡くなった後の手続きを誰にお願いすればいいのかと。実は、イズミさんには、年の離れた弟が一人いる。子どもの頃は仲が良かったが、弟は結婚してからお嫁さんの尻に敷かれっぱなしである。父の相続のときも、このお嫁さんが横槍を入れて随分とてこずったものだ。それ以来、音信不通である。自分が将来、介護が必要になった時も弟夫婦には頼りたくないと思っていた。ある日、新聞の無料法律相談会の広告が目にとまり、電話予約して相談に行った。対応してくれた行政書士の話では、遺言書を作成しておけば相続人以外に遺贈ができること。見守り契約や生前事務委任、任意後見契約、死後事務委任契約で判断能力が低下してから自らの死後の事務まで委任できるということであった。後日、行政書士事務所を訪ね、今やるべきことは何かを相談した。そこで、まず、公正証書遺言を作成することにした。自分の財産は、交通遺児を支援している財団法人に遺贈することにした。親を交通事故で亡くし、進学をあきらめなければならない子供をひとりでもなくしたいと思ったからだ。その後定年退職してから、数回行政書士と相談を重ね、見守り契約や生前事務委任、任意後見契約、死後事務委任契約の公正証書を作成した。イズミさんはホッと胸をなでおろした。

女性の相続・遺言①

これから、相続・遺言について、女性の立場から見ていきたいと思います。まず、第1回目は、アコさん、65歳。夫は67歳、メーカー勤務で大学卒業後入社し、営業一筋で45年。2年前、定年退職したばかり。子どもはなく、夫の両親は他界、夫には兄が一人いる。定年後しばらくして二人は豪華客船の旅にでかけた。乗船したのは、12月。船内では、クリスマスパーティーが開催されタキシード、ロングドレスで参加。夢のような時間を過ごし、客室に戻り休む。朝方、夫が急に苦しみだし、すぐにドクターを呼び手当をしてもらい容体は落ち着いた。この時、夫は思った。もっと早くに遺言書を書いておくべきだったと。まだまだ自分は若いし、遺言書を書くなんて縁起が悪いと先延ばしにしていた。このまま自分が亡くなれば、兄も相続人になり、アコさんに財産を全て残してあげることができない。アコさんも夫に遺言書を書いてほしいとはなかなか言い出せないでいた。そこで、その場に居合わせた船長にお願いをし、証人2人のもと遺言書を作成した。二人は、定年退職後は、世界中をゆっくり旅行したいねと話し合っていた。アコさんが、買い物途中たまたま旅行代理店の前を通りがかったときに豪華客船の旅のパンフレットが目に入り帰って夫に見せた。夫も乗り気で、翌日、旅行代理店に行き申し込みを済まし、1か月後に乗船したのである。                       その後、体調も回復し帰宅したが、この遺言書は普通方式の遺言ができるようになってから6か月生存するときは効力はなくなる。そこで夫は後日、公証役場で公正証書遺言を作成してもらうことにした。付言事項というアコさんへのラブレターを添えて❤

(在船者の遺言)                                  第967条 船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いを持って遺言書を作ることができる。